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主張&声明

新証拠によって脅迫状と石川さんの結びつきは否定された!
東京高裁は鑑定人尋問をおこない再審開始を!

(月刊「狭山差別裁判」490号/2019年3月)

 狭山事件では、脅迫状は犯人の残した唯一の物的証拠だ。有罪確定判決(2審・東京高裁の無期懲役判決)は、筆跡、足跡、血液型、スコップなど客観的な有罪証拠を7つあげて、そのなかでも「脅迫状の筆跡が被告人の筆跡であることを主軸として被告人が犯人であることを推認させるに十分」として、脅迫状の筆跡の一致を有罪証拠の主軸としている。

 第3次再審請求で弁護団は筆跡について多くの新証拠を提出してきた。とくに第3次再審請求では、東京高裁の勧告によって、逮捕当日に石川さんが書いた上申書が証拠開示され、これを脅迫状と比較した筆跡鑑定、国語能力鑑定が提出されている。

 また、取調べ録音テープが証拠開示され、石川さんが取調べで字を書いている場面の録音が明らかになり、その際に書かれた図面の文字とあわせて識字能力の鑑定がされたことは重要だ。取調べ録音記録に現れている当時の石川さんの識字能力は客観的なものだといえるからだ。2016年に提出され森鑑定は、1955年に文部省がおこなった国民の読み書き能力調査をふまえたうえで、取調べ録音テープを分析し、当時の石川さんが部落差別によって文字を奪われた非識字者であり、脅迫状を書けたとは考えられないことを明らかにしている。魚住第3鑑定は、取調べ録音テープで、警察官が読み書きの指導をしていることを指摘し、それでもひらがなの表記ができていない石川さんが脅迫状を書いたとは考えられないとしている。いずれも説得力がある。

 そして、2018年1月にコンピュータによる筆跡鑑定である福江鑑定が提出された。福江鑑定の方法は、石川さんの書いた文字と脅迫状の文字をコンピュータで読み取り、重ね合わせてズレ量を計測し、そのズレ量(相違度)の分布から同一人か別人かの異同識別をおこなうものだ。字形の相違度を客観的に計測し、石川さんと脅迫状の筆跡のズレ量は、同じ人の書きムラでは説明できないほど大きいことを明らかにしている。そして、開示された石川さんの上申書や拘置所で書いた手紙と脅迫状の共通文字である「い、た、て、と」4文字についてすべての組み合わせについて重ね合わせたときのズレ量の計測し、脅迫状と上申書・手紙は、いずれも「99.9%の識別精度であきらかに別人により筆記されたものである」と結論づけている。有罪の根拠になった警察の筆跡鑑定のように主観的に文字を選んで、ココとココが似ているという筆跡鑑定と違って福江鑑定の方法が客観的で科学的であることは明らかだ。石川さんは脅迫状を書いて届けた犯人ではない。

 そもそも脅迫状にも脅迫状が入っていた宛名の書かれた封筒にも石川さんの指紋がない。2018年末に弁護団が提出した齋藤指紋鑑定は、脅迫状やそれが入っていた封筒に石川さんの指紋がないことは、石川さんが脅迫状・封筒に触れていないことを示していると指摘している。齋藤鑑定人は、自白や有罪判決の認定にもとづいて脅迫状や封筒を作成し、訂正した場合に当時と同じ方法で指紋が検出されることを石川さん本人を含む3人の被験者で実験をおこない確認している。

 このように客観的事実、科学的証拠が脅迫状と石川さんの結びつきを否定しており、脅迫状を犯人である証拠の主軸とした有罪判決の誤りは明らかだというべきである。新証拠を総合的に見れば有罪判決には合理的疑いが生じており、東京高裁は、鑑定人尋問をおこない、狭山事件の再審を開始すべきだ。

 新証拠の学習と教宣を強化し、56年におよぶ冤罪の真相と石川さんの無実を訴え狭山事件の再審開始を求める世論を広げよう!


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