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<月刊「狭山差別裁判」377号/2005年5月>

検察の証拠隠しに加担した最高裁棄却決定を批判しよう!
工夫をこらし市民に広く司法の現実をアピールしよう!

 最高裁の棄却決定は、証拠開示もしないでおこなわれた点でも不当である。狭山弁護団は、第2次再審で、証拠開示について検察官とくりかえし交渉をおこない、国会での追及や国連での訴え、要請行動などによって、一九九九年3月に、東京高検の會田検事が、手元に「積み上げると2~3メートル」の証拠があり、未開示のものがほとんどだと回答した。ところが、その後、検察庁は、弁護側の開示請求にたいしてまったく答えず、手持ち証拠のリストさえ一貫して開示を拒否している。弁護団は、このような状態を改善し、証拠開示を勧告・命令するよう裁判所に求めたが、東京高裁の高木裁判長も、高橋裁判長もこれに答えることなく、再審請求も異議申立も棄却した。特別抗告審でも、弁護団は最高裁に証拠開示勧告の申立をおこない、調査官は検討しているかのように言っていたが結局何もせず、棄却決定は証拠開示についてまったく触れていない。
 「再審における原則全面開示を否定することは、新証拠発見を理由とする再審を一般的に認めることと相い容れない。国家機関が新証拠を有している可能性を不問にして、冤罪を訴える、有罪の言渡を受けた者に新証拠の提出を求めることは背理だからである」(田中輝和・東北学院大学教授『刑事再審理由の判断方法』)との指摘は当然である。
 たとえば、特別抗告棄却決定は、「限られた文書の記載のみから、その作成者の書字・表記・表現能力の程度・水準を厳密に確定することはできない」として、石川さんと脅迫状の筆記能力の違いを指摘した弁護側の鑑定をしりぞけている。
 一方で、棄却決定は、関巡査あての手紙や元雇い主の調書など一部の証拠をとりあげて、(当時の石川さんは)「ある程度の国語的知識を集積していた」「脅迫状程度の文章や字を書き得る能力がある」と、「書字・表記能力」を一方的に「確定」して、弁護側の主張を否定している。矛盾しているではないか。
 弁護団は、昨年10月29日に最高裁に提出した証拠開示勧告等申立書において、石川さんの筆跡・筆記能力に関する捜査報告書や関係証拠の開示を具体的に求めていた。しかし、最高裁は、弁護側が求めた筆跡鑑定の事実調べも新旧証拠の総合評価もせず、筆跡・筆記能力にかかわる検察官手持ち証拠の開示請求にも応じなかった。最高裁は、「書字能力の程度を確定する」ための未開示証拠の開示請求にも事実調べにも答えることなく、一方的に決めつけて、弁護側の主張をしりぞけているのである。最高裁のやりかたは明らかに検察寄りだといわれてもしかたがないであろう。最高裁はどのような姿勢で再審請求の審理にのぞんでいるのか、きびしく問われなければならない。
 各地で最高裁による棄却決定に抗議するさまざまな取り組みがすすめられている。こうした証拠隠しをつづける検察官とそれと一体となった裁判所の不当・不公平な実態を暴露する必要がある。そして、いかに市民に不当性を伝えるか、石川さんの無実を広げるか、いろいろな工夫が必要である。第3次再審にむけて、まず、最高裁のやりかたの不当性、棄却決定文の誤りを具体的に批判していこう。不当逮捕から42年をむかえる5月24日には、狭山事件の再審を求める市民の会の庭山弁護士やルポライターの鎌田慧さんらが中心になった実行委員会の主催で市民集会がひらかれる。さまざまな人たちのアピール、寸劇、音楽演奏などがもりこまれている。各地でも、同様の工夫をこらした集会、市民に広くアピールする取り組みをすすめよう!


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