<月刊「狭山差別裁判」369号/2004年9月>
狭山新100万人署名に全力でとりくもう!
再審の逆流をはねまえし特別抗告審に勝利しよう!
さる8月26日付で東京高裁が袴田事件の即時抗告を棄却する決定をおこなった。決定は、弁護側の主張であったねつ造の疑問を頭から否定し、自白の疑問にたいしても「犯人は不自然な自白をするもの」として矛盾をごまかしている。自白や有罪証拠の疑問を指摘した新証拠については、個々バラバラに排斥するという不当な棄却決定である。こうした棄却決定の論法は狭山と共通している。「無辜の救済」(無実の者を罰してはならない)という再審制度の理念も「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則もふみにじるものである。有罪証拠とされたズボンが袴田さん本人にははけなかったことを弁護団は、糸の密度を分析する科学的な鑑定によってサイズが違うことを明らかにしたが、棄却決定は「誤差もありうる」として、これをしりぞけている。自白の疑問や捜査の不正の疑いなど関連する証拠と総合的見ようとしていない。狭山事件の棄却決定が、筆跡の相違を認めながら、「字は書くたびに違う」としてごまかし、弁護側の筆跡鑑定をしりぞけたのと同じズサンで不当な判断方法である。こうした市民常識とかけはなれ、「官」には甘い(捜査の不正やねつ造はないと決めてかかる)裁判所の姿勢そのものを問題にし、変えていかなければならない。えん罪の現実、人権侵害の実態を裁判官はもっと知るべきなのである。えん罪の恐ろしさ、えん罪はなぜおこるのかを、もっと国会でも議論し、その教訓を生かした司法改革こそすすめなければならない。
10月には狭山事件の確定判決となっている寺尾判決から30年を迎える。いいかえればこの30年間まったく事実調べがおこなわれていないことを意味する。弁護団は、多数の新証拠、しかも専門家による鑑定書、意見書を裁判所に提出して、石川一雄さんの無実と寺尾判決の誤りを明らかにしているのである。たとえば、弁護団が提出した専門家の筆跡鑑定書、意見書は21通にもおよび、それらは石川さんが脅迫状を書いたのではないことを明白に証明しているが、鑑定人尋問はおこなわれていない。
また、とくに、第2次再審で提出された斎藤保・指紋鑑定士による5通の鑑定書と鑑定補遺は、石川さんと脅迫状が絶対に結びつかないこととともに、自白のおかしさ、寺尾判決の認定の誤り、万年筆の疑問を明らかにしている。しかし、東京高裁は、斎藤鑑定人の尋問もおこなわず、「推測の域を出ない」とするだけで、しりぞけている。しかも、いま最大の焦点となっている封筒の「抹消文字」「2条線痕」の存在について棄却決定はまったく触れていない。
袴田事件の棄却決定も同じだが、弁護側鑑定については鑑定人尋問もおこなわず、一方的な決めつけで排斥するというやりかたは許されない。狭山事件の第2次再審における新証拠の数々を考えれば、もはや鑑定人尋問などの事実調べは不可欠である。
狭山弁護団は、この10月29日に補充書、新証拠を最高裁に提出し、調査官と面会して事実調べを強く求める。部落解放同盟中央本部では、この日、日比谷野外音楽堂での中央総決起集会を開くとともに、最高裁に新署名を提出し要請行動をおこなうことにしている。このときに多くの署名が提出できるよう各地における新100万人署名運動に全力でとりくもう。
斎藤鑑定など特別抗告審のポイントとなっている新証拠の学習・教宣とあわせて、30年間事実調べがおこなわれていない裁判の不当性、司法の問題を訴え、新100万人署名を進めよう!
新署名用紙はここからダウンロードできます(PDFファイル)
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