<月刊「狭山差別裁判」326号/2001年2月>
東京高裁はただちに狭山事件の再審を開始せよ
ことしこそ事実調べ、証拠開示を実現しよう
狭山弁護団は、一月二十六日に東京高裁に異議申立補充書を提出した。この日提出された補充書は、昨年末に提出された小畠意見書についてのもので、脅迫状と石川さんの結びつきが完全に断たれたことをあきらかにし、再審開始を求めるものである。小畠意見書は、脅迫状封筒の「少時」がボールペンでなく万年筆インクで書かれているということや「少時」の背景にあるペンで書かれた筆圧痕の存在など、齋藤第一、第二鑑定の指摘の正しさを化学的な見地から裏付けたものである。筆跡の違いとともに、石川さんが脅迫状を書いたのではないことを決定的にあきらかにしているといえる。
弁護団は異議審のこの一年半に五通の新鑑定を提出している。弁護団の新証拠の積み重ねと事実調べを求める国民世論の広がりによって、昨年には裁判所が鑑定人の説明を聞くまでにいたった。わたしたちは、さらに棄却決定批判の声を大きくし、再審開始を求める闘いを一層強化しよう。
年明けにも、あいついで住民の会が結成され、ついに百団体を突破した。現在、二十五都道府県で一〇一の狭山・住民の会が、学習会や市民むけの真相報告集会、ビラ配布やパネル展示、ニュースの発行をはじめ、インターネットも活用したホームページの開設など、市民に狭山の真相を広げる取り組みを繰り広げている。狭山事件の真相を原点にかえって学習をすすめるだけでなく、反差別・人権、えん罪や司法改革の問題などテーマを広げて学習会を継続的におこなっているところも多い。市民一人ひとりが、狭山事件と司法、人権について考え、再審開始と証拠開示を求める声をあげていく、こうした住民の会がどんどん広がっていることの意義は大きい。
弁護団は、この二月に東京高裁の高橋裁判長と面会し、事実調べと再審開始を強く求めるが、わたしたちは、緊迫感をもちながら、運動の輪を着実に市民のなかに広げるていこう。とくに、この二月、三月に再審開始と証拠開示を求めるハガキを東京高裁・高橋裁判長と東京高検・江幡検事に集中しよう。
弁護団は、一月二十六日、証拠開示についても折衝をおこなったが、江幡検事は証拠リストの開示をふくめて「二~三メートル」という手持ち証拠の一切の開示にいまだにおうじていない。松川事件では、死刑判決を受けた被告のアリバイを証明する「諏訪メモ」といわれる証拠を検察官は隠しつづけていた。最高裁が提出命令を出すと検事はこれをメモを書いた本人に返していたという。じつに無責任かつ不当な証拠隠しをつづけていたのである。この「諏訪メモ」も弁護団が存在を知らなかったものである。だからこそ全面証拠開示、証拠リストの開示が必要なのである。財田川事件でも、裁判所の提出命令で捜査報告書を紛失していたことがあきらかになった。ところが、その後、警察署にほこりをかぶっていた捜査資料が事件後二十七年目に出て来たという。そのなかに自白の虚偽と捜査の不正をあきらかにする証拠がふくまれ、高松地裁はそれを新証拠の一つとして再審を開始した。弁護団が存在を知らない、特定できない検察官手持ちの証拠が、えん罪を明らかにし、再審の決定的証拠となったという、これまでの誤判の教訓をふまえ、司法改革の動きもみすえながら、狭山事件にかかわる全証拠の開示を強く東京高検に求める国民世論を作り出そう。
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